原皮から革になるまでの作業を鞣し(なめし)といい、鞣しを行う業者を「タンナー」といいます。
今回、ご紹介する内容は鞣しの作業工程の一部です。
【 鞣しの主な目的 】
①革を柔らかくすること ( 革を柔らかくすると書いて「鞣す」と読みます )
②革が腐敗しないよう加工を施すこと。 鞣し前では、腐敗、乾燥といったように製品として扱うには程遠い状態となっています。
【 鞣しの準備 】
〇水戻し
原皮を水などで綺麗にする工程。
脱水された状態の皮に水を染み込ませ、柔らかな状態に戻します。
この段階では、血液やゴミなどが付着した状態。
不純物を塩分とともに洗い流し、きれいな状態にすることで後の薬品処理や染色などを円滑に行えるようにします。
〇裏打ち
革には表(銀面)と裏(床面)があります。
裏面には肉や脂肪が残っている為、大型の機械でそぎ落とします。
〇革に柔軟性を与える
石灰を混合した強アルカリ性の液体の中に皮を浸します。
この工程により、失われたコラーゲン繊維がほぐされ、ハリと潤いが復活します。
その際に、皮の表面に付着していた毛、脂肪などが液体の成分で分解されます。
〇革の厚みを整える
専用の機械を用いて、皮を決められた暑さに分解し厚みを調整します。
この時点で表面(銀皮)、裏面(床皮)に分けられます。
※床皮は医療用など様々な場面で利用されています。
〇垢出し(アカダシ)
ここまでの工程で残ってしまった不純物(脂肪など)を機械や刃物を使って丁寧に取り除きます。
〇分解した皮を再び石灰に付ける
分解した際に、からまってしまったコラーゲン繊維を再びほぐす為、再度石灰液に漬け込みます。
柔らかさが特徴的なスエード革やソフト革に過去する為の重要な工程です。
〇石灰を取り除く
石灰液に漬け込んだ際に付着した石灰を、完全に取り除く作業を行います。
銀面の余計なたんぱく質が除去され、初期の状態よりも滑らかな質感に変化します。
また、石灰を取り除くことで、鞣し剤がスムーズに浸透するようになります。
〇酸に漬ける
薬品を使ったクロム鞣しの場合は、ここで皮を鞣す前に酸性溶液に浸します。
鞣し剤は酸性で溶解する為、この作業によって鞣し剤が皮へ吸収しやすくなります。
結果、繊維組織の深くまで鞣し剤が浸透します。
【 鞣し 】
耐久性や耐熱性を向上させる為に、鞣しが行われます。
鞣し剤がコラーゲン組織と結合することを「なめし」と言います。
革が柔らかくなり、色味や特徴、耐熱性といった様々な特性がここで付与されます。
※この工程後に「皮」→「革」へと呼び方が変化します。
● 余計な水分を脱水
鞣しの際に含まれた、余計な水分を機械で絞り出します。
ここでの仕上がりによって品質が分けられます。
● カットして厚さを調整する
シェービングマシンで革の裏側(床面)を削って、全体の厚みを均一にします。
この工程で製品に合った厚みに調整します。
● 中和
酸性になっている革をアルカリで中和します。
これによって今後の染料や加脂といった作業が均一に浸透するようになります。
● 再度鞣す
製品の用途にあった革にするために、もう一度革を鞣します。
革の風合い、耐熱性、防水など様々な特性が付与されます。
● 乾燥
後の染色や加脂をしっかりと行うために、乾燥させます。
自然乾燥や熱風、天日干しなど様々です。
例えばタンニンで鞣した革は、天日干しすると色が濃くなるため屋内での乾燥を行います。
このように素材やタンナーによって乾燥のさせ方は多岐にわたります。
● 仕上げ
革への色付けや仕上げ加工を施す工程です。
● 銀むき
ヌバックやベロアといった起毛素材は、この工程で起毛仕上げを行います。
きれいに染色するため、革の表面をペーパーがけし、平らに整えます。
● 革を染める(着色)
染料を使って、革に色を付けます。
染色方法は大きく3つに分けられます。
① 染料仕上げ
革本来の質感や風合いを活かし、製品後の革の育ちを楽しむ用途で用いられる染色方法。
② 顔料仕上げ
ビビッドな色合い、均一間のある表情。汚れや水に強い。
③ アニリン仕上げ
染料仕上げに近い風合いを残しながら、発色が良い仕上がりになります。
● 加脂
場合によっては、油脂を使って柔軟性を加えること(加脂)もあります。
染色と加脂が終わると、革を伸ばします。
伸ばした後は、染色や加脂を革にしっかりと付着させるために乾燥させます。
● 最終工程
機械によって革を振動させることで、革により柔軟性を与えます。
形を整え、スエードなど最終的な革の種類に応じて銀面がサンドペーパーなどで磨かれます。
必要な工程を踏んで、計量化後に出荷されます。
◇あとがき
以上が鞣しの工程ですが、その他にも様々な鞣し方があります。
今回ご紹介した「鞣し」は、最も一般的な革の鞣し方となります。
皮から革に変化する工程を実際に見る機会は少ないですが、日本国内で鞣しの見学を可能とする工場がいくつかあります。
少しでも興味があれば、是非現地にて見学をしていただければ新たな発見ができるかと思います。